ひと足早めの怪談? よろず感想文(非BL編)その2

 近所の公園に藤棚があって、ベランダに出ると風にのって藤の花の良い香りがします。
 四月は新しい環境について行くのがやっとの毎日で、気がついたら一回も更新できないまま、もう風薫る五月。連休も根津神社に身代わり(厄除け)の鈴を返しに行った以外ぼ〜と過ごして終わりましたが、取り敢えず人心地つけた感じで有り難い休息になりました。

a0095010_16143248.jpg 連休初日に、友人が久しぶりに訪ねてくれて、お土産にロールケーキを頂きました。
 名前は『信長』。漆黒のココア生地にレモン風味のクリームがたっぷり詰まった爽やかな甘みのケーキです。


「対になったケーキがあってね、そっちと迷ったけどこっちにしたの」とのこと。ちなみにそちらは白くて綺麗なチーズ味のロールケーキだそうで、名前は『蘭丸』。
 私が大爆笑すると「笑うと思ったんだ…」と友人は苦笑いしてました。だって、対のケーキが『農姫』とかじゃなくて『蘭丸』なんだ〜と思ったらおかしくて。え? そう思うのは腐女子だけ? そうかなぁ…。


 さて今回は、一回飛ばしてしまった『よろず感想文(非BL編)』その2

 まずは、その1の時ご紹介したかった作品で、刊行されて既に随分経ってしまったのですが…

さよならキャラバン (フラワーコミックスアルファ)

草間 さかえ / 小学館

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 草間先生の初めての非BLものの短編集です。私は草間先生フリークですから、BLであろうとなかろうと「ウハウハ」なんですが、ご本人は「これで良いのか分からない」とご謙遜なさってました。
 初めての少女(?)漫画ですし、全くBLを読まない読者の方からどう受け止められるか、やはり気になるところでしょうけれど、私にとってはとても先生らしい素敵な作品になっていると思いました。
 ちょっと懐かしくて、どこにでもありそうなのんびりした田舎の町(こういう場所とか家とか描かせたら右に出る者はいないと思う) “ 比良坂町 ” に住む人々の、とても些細でちょっと笑っちゃったり、じんわり暖かくなるような不思議なお話なんです。
 表題作は高校生の恋のはじまりのお話ですけど、全編を通した主役は、ちょっと奇妙な青年と喋る黒猫です。
 ざっくり言うと現代的怪談…だと思います。
 怪談って言うとすぐ「恨めしや〜」系の “ お化けの話 ” になっちゃいますけど、怪談とは恐らく、表現しがたい人の心の動きとか、目に見えないけれど何か感じるとか、或いは自然の脅威というものを物の怪の仕業にして表した物語なのではと思います。
 全部が全部怪しいものが出て来る話じゃありませんが、恋する気持ちも、よくない事が起こる前兆も、タイミングよく偶然が重なる事も、草間先生の手にかかると “ 怪談(不思議な話) ” になっちゃうんです。
 いつも凄いなと思うのは、拾ってくるモチーフは凄く些細な事なんですよ。それをここまで味のあるお話に出来るのは超絶技巧派作家(裏表紙にあったんですが凄い表現…)ならではでしょうか。
 でもね、それは先生が好きなものを描いてるからだろうな〜と思います。黒猫、眼鏡、蛇、金魚、サーカス、古代都市、夢、時計…。たぶんどれも大好きなんじゃないでしょうか。私も大好きです。
 是非是非、これからもBLの枠に止まらず、色んな作品を描いて頂きたいと思います。

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さてお次。『さよならキャラバン』を読んで、ピーンときたのがこちら…

百物語 (新潮文庫)

杉浦 日向子 / 新潮社

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 喋る猫が出て来る話があるんです。日向ぼっこしている猫が魚を干してるお婆さんに「ばばさん。それを、おれに食わしや。」って話しかけるの。猫って、100歳こえると化け猫になるって知ってます? 喋れるようになるそうです。そんで行灯の油を舐めるとか。
 杉浦さんの猫の絵がまた、ホントにポロッと喋りそうで。面白いですよ。
 一つの物語はとても短いもので、だいたい7ページくらいです。勿論、『百物語』ですから、100話あります。絵は上手ではありませんけど、人と物の怪が寄り添って暮らしていた頃、江戸時代の日本人の感性を見事に伝えてくれます。
 私が “ 怪談 ” について、前述した感想をもっているのは、この杉浦さんの『百物語』を読んだからなんです。人は時に物の怪のように愚かで、物の怪は人のように情深くあったり…。人はいつの時代も紙一重で生きているのかも知れませんね。妖ものに興味のある方でしたら、是非お勧めしたい一冊です。
 杉浦さんはお亡くなりになってしまいましたが、こうして残された優れた作品はいつまでも読み続けていきたいものです。

【追記】
 私はNHKの番組が好きなんですが、杉浦さんが江戸の歴史、風習についての解説コーナーを担当していた「コメディーお江戸でござる」をよく見ていました。
 杉浦さんは毎回素敵な着物姿で登場し、やさしい語り口で江戸の暮らしのあれこれを説明してくれるのが楽しみでした。お元気そうに見えたのですが、ずっと病気と共に過ごされていたようです。
 百物語の中では人の最後やあの世の事がいろいろ書かれていて、その頃の生死観を窺い知る事ができますが、昔も今も、余りに早い旅立ちは、どうしたって惜しんでしまうものですよね…。


a0095010_21123669.jpg最後に、物の怪漫画の決定版を2作品。連載中なので未読の方は是非!(夏にきちんとご紹介します!)

百鬼夜行抄 (1) (ソノラマコミック文庫)

今 市子 / 朝日ソノラマ

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物の怪漫画と言ったら、私にとってはこれですわ〜〜。
絵も話も何もかもが好きです。
王道です。人が取り殺されちゃったりしますし、物の怪がちゃんと怖いものとして描かれています。

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夏目友人帳 (1) (花とゆめCOMICS (2842))

緑川 ゆき / 白泉社

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アニメ化もされてご存じの方も多いかと。今更ですけどすごく良いので。
夏目少年が触れ合う妖ものとの日々です。彼の苦労は絶えないですけど、切なくてとても素敵なお話が多く、続きがとても楽しみです。



※あまり新しい作品がないのですけど、『いいものは、どんなに時間が経ってもいい!』の姿勢でご紹介しています。どんなに『いい』のか伝えきれていない気がして、最近はもんもんとしちゃうんですけどね…。
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Commented by たなか at 2010-05-18 11:51 x
「コメディーお江戸でござる」の杉浦さん、わたしも好きでした。まるでご自身が江戸に住んでいらしたかのようなご説明の数々に、感じ入るやら笑えるやらで(^^)。杉浦さんの漫画も好きでした。亡くなられたのが、いまでも残念です。
Commented by apodeco at 2010-05-19 22:55
たなかさんも「コメディーお江戸でござる」見てらしたんですね。
お芝居も楽しかったし、杉浦さんのお話もとても面白かったですよね。
最近、好きな方が(栗本薫さんも、忌野清志郎さんも…)
みんなあっちに行ってしまうので、とても寂しい気がします。
by apodeco | 2010-05-09 18:06 | よろず感想文 | Comments(2)