映画の視線と心の視線 — 『ブロークバック・マウンテン』

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 さて、今回は映画の感想文を書きたいと思います。
 ちょっと前の映画ですが、『ブロークバック・マウンテン』について。先日、友人とおしゃべりしたおり、主演のヒース・レジャーさんが亡くなったことを知りまして…。もう一ヵ月以上前になるんですね。実はニュースで見ていたのですが、友人に聞くまでこの俳優さんだということに気が付かなかったんです…。
 リバー・フェニックス、レスリー・チャン、ブランドン・リーと私の好きな俳優さんが次々亡くなってしまいましたが、前途有望な素晴らしい俳優さんが若くして亡くなるというのは本当に悲しいことです。改めてヒース・レジャーさんのご冥福をお祈りいたします。

ブロークバック・マウンテン プレミアム・エディション
/ ジェネオン エンタテインメント
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 1963年の夏。ワイオミング州のブロークバック・マウンテンで、二人の若者が羊の放牧の仕事を任されます。一人は寡黙で無骨そうな青年イニス(ヒース・レジャー)、もう一人は陽気で人好きのする青年ジャック(ジェイク・ギレンホール)。
 仕事は人里から隔絶された山の中、二人っきりでキャンプをしながら行うというもの。まさに大自然の真っ直中、頼るのはお互いの存在しかありません。全く対照的な二人ですが、一緒の時間を過ごすうちに深い友情が芽生えます。それが、ほんの些細なきっかけで、友情を超えたものへと変化して…。




 男性同士の愛を無理なく描いていて大変良かったです。原作も是非読んでみようと思いました。
 60年代のアメリカ、保守的です。そんな西部の片田舎で、男の中の男って感じのカウボーイが、20年以上にも渡って“普遍の愛”を貫くお話です。
 ブロークバック・マウンテンの山の中、何せ陸の孤島のような場所で二人っきりです。周りは羊と犬と狼くらい。若い盛りの男性ですから、“そういう事”が起きてもおかしくはありません。でも、物事が動くのはどちらかの働きかけがあったからです。動いたのはジャックの方でした。
 一度はひと夏の出来事で終わらせるようにそれぞれの生活に戻り、結婚し、子どもをもうけます。でも、お互いに心の中に消すことの出来ない熾火のように思いが燻っていたんです。ここでも動いたのはジャックでした。二人は4年振りに再会し、お互いの気持ちを確かめ合います。
 映像がとてもいいんです。アン・リー監督の作品を見たのはこれが初めてですが、カメラワークに心酔しました。冒頭で、ジャックの姿を望遠で執拗に捉えているのですが、その舐めるような視線が何ともセクシャルで、かなり落ち着かない気分になりました(笑)。映像が意志をもって迫ってくるという経験はあまり無いことだと思います。また、二人が再会したシーンでは、激しく抱擁しながら口づけを交わすのですが、まさに感極まって思いを止められないといった様が、互いの偽らざる気持ちをよく表していて感じ入りました。感情を表したシーンが細やかに配置されていて大変丁寧につくられていました。
 この再会シーン、前述の訃報を教えてくれた友人は「こんな所でやっちゃ駄目〜」と心の中で絶叫しながら見たそうですが、確かにこんな所でやっちゃったので、イニスにとっては不幸の始まりになってしまいます。でも、遅かれ早かれ彼はこうなっていたと思います。この人、良くも悪くも変われないんですよ。
 この話は20年にも渡る長い間の出来事なので、二人が逢瀬を重ねるたびに時代が進んで行くんです。携帯電話とパソコンが普通にある今の時代の人にはピンとこないかも知れませんが、白黒テレビがカラーになり、人類が月へ行き、ヒッピーにウッドストック、ウーマンリブ運動…(私も詳しくないので、順番が合ってないかも)物質面でも精神面でも色んな変化があったんですよ。人も、街も、時代も変わります。ジャックも逢うたびに変わって行きますが、イニスの方は少しも変わらない(というか、ついていけない)。
 ジャックはある意味自分に正直な人なので、イニスに積極的に働きかけるのですが、いくら時代が進んでも同性愛者に対しては厳しい目が向けられたままでしたから、ジャックが望む生活をイニスは選ぶことが出来ないのです。
 若い頃経験した『出会い』というのは年を取ればとるほど輝きを増すようで、イニスにとってもジャックにとってもブロークバック・マウンテンでの生活は得難く忘れ得ぬものだったと思います。迎える結末は何とも言えないものですが、イニスは死ぬまで変わらず、ジャックへの思いを持ち続けてくれると思います。
 西部なまり(?)で木訥と話すイニスの姿は、彼の不器用さを表しているようで、何ともおかしく、また悲しく感じました。
 本当に、イニス役のヒース・レジャーさんは素晴らしかったです。
 秀作です。是非、見ていただきたいと思います。
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by apodeco | 2008-03-08 01:58 | よろず感想文 | Comments(0)