アタ

アタ (ミリオンコミックス 26 CRAFT SERIES 18)
藤 たまき / / 大洋図書
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My Favorite Comics(15禁)

J.GARDEN23で素敵な作家さんを発見してしまいました。
絵が綺麗で可愛くて、一目惚れ(節操なしなので)。早速新刊をGETしました。
(しかもサイン本! ラッキ〜)


a0095010_1151538.jpgMy Favorite Words
「寝たって寝なくたって 心の在り様はどっちにしろ本人にしか解らないんだ」
「アタ」P.22より影郎の台詞

 「アタ」は人の名前です。変わってますね。由来はお話の中で出てきます。
 「アタ」は他人ですが「影郎(かげろう)」の家で兄弟のように育ち、今も一緒に暮らしています。「アタ」は中学生の時から『ゲイ』を自認し、公言して憚りません。卒業後は進学もせず、バイトをしながらあっちの男こっちの男と糸の切れたカイトのよう。いつも恋ばかりして傷ついています。
 まっすぐで健全な心の持ち主の「影郎」は、そんな「アタ」が心配で心配で、実の母にして「私が子供だったら あんたみたいな親はお断りね〜」と言わしめる程、頑固親父のように「アタ」を監視し叱責します。
 「アタ」の気持ちが分からないと苛つく「影郎」と、自分の本当の気持ちに向き合おうとしない「アタ」。
 一番近くにいながら、一番遠い存在になってしまった二人は—。




 読み始めの「アタ」についての印象は、尻軽で頭の弱そうな(ヒドイ…)、ホントにどうしようもない子なんです。これじゃあ「影郎」でなくとも心配で目が離せないわな、と思うのですが、「アタ」の気持ちが見えてくると、その思い込みを抱えた細い身体を、ぎゅっと抱きしめてあげたくなりました。(ゲイだから嫌がられそうですが)
 早い段階で性指向を自覚したがために、気持ちと身体が「ばらんばらん」になっちゃったんですね。生い立ちや、「影郎」たちとの生活も要因かと思います。決して変な子じゃないんです。
 「卵が先か鶏が先か」ではないですが、セックスから始まる恋も、恋愛を深めた末のセックスも両方在りだと思います(優劣はないと思います)が、10代でセックスからって言うのはちょっと…ねぇ。オイオイと思うのはおばさんだからでしょうか。
 冒頭の台詞は「影郎」と親友の「讃岐(さぬき)」の会話の一部です。「讃岐」の「恋愛は結局寝たモン同士にしかわかんない事多いだろ」の台詞に反論して出た言葉です。寝なくても愛はあると考える「影郎」に、あっても目に見えないから肉体の臨場感は手強いと言うのです。
 確かにねぇ…私は「影郎」派ですが、高校生の男の子にしては健全過ぎて老成している感じ(笑)。この健全さが「アタ」を追い込んでしまうのですが、「影郎」がここまで執拗に堅いのも「アタ」のせいなんです。
 恋愛に対して積極的な「讃岐」の存在が、膠着した二人の関係に一石投じる役目を果たします。三人の恋の行方がどうなるかは、是非読んでみてくださいね。

 「アタ」の性に対する赤裸々な台詞を読むと、はらはらドキドキしてしまいます。早熟な子どもだからと言えばそれまでですが、触れ合えば満たされる気がするというのは、大人も子どもも変わりないと思います。でも心が伴わない触れ合いは、結局傷つくだけで満たされないのも同じです。心と身体、両方揃って初めて得られる幸福な温もり。それを得るにはどうしたらよいのか…。
 「寝る」という行為は、こんな子どもにも簡単に出来てしまいますが、心を繋ぐこと、身体を繋ぐことはどういうことか、考えさせられます。いい大人になっても難しい問題です。
 私には『雨天』の後編に出てくる「影郎」の独白は、恋愛の先を示唆していると感じました。今の私は、ここへ行き着いた気がしています。(老人の域!・汗)

【余 談】
 このお話の好きなところがもう一つ、二人が住んでいる場所です。
 ここは実在の場所です。私は3年ほどこの近所で働いていました。二人のお家がどの辺か、なんとなく分かります。東京のど真ん中ですが、とても古い土地柄です。氏神様が宿っている、そんな感じの場所なんです。
 この周辺は常に開発されていて、様相が刻々と変化しています。いつまでも変わらない物はないと達観しているつもりですが、ここだけは変わらないでいて欲しいと切に願っています。
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by apodeco | 2007-10-25 12:20 | BL感想文