長らくお休みしておりましたが、お陰様で身体もすっかり回復いたしましたので、ブログを再開いたします。
更新は不定期更新とさせて頂きますので、思い出した時にでもお立ち寄り頂ければ嬉しいです。うかうか半年近くもお休みしていたんですねぇ。年を取ると、時間が経つのが早く感じます。
さて、夏休みです。と来れば、そう、読書感想文です(笑)。
宣言しておりましたBL漫画の感想は後日に。
ごめんなさ〜いやっと読了したんですが、まだ私の中で熟れていないのです。なのでもう少々お待ちを。
今回はタカスギシンタロ監修
『超短編の世界』(創英社)の感想文です。
超短編の世界
/ 創英社
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テーマは【恐怖の超短編】とのことで、47名の方の書かれた58編の“恐怖”がびっしり詰まっています。
ところで、
超短編ってなあに? とお思いの方もいらっしゃると思います。言葉からは、短編小説のもっと短いものか、ショート・ショートを連想しますよね。『超短編の世界』の冒頭にある解説によると、
「超短編は数百文字の短いものがたり。それ以外にこれといった決まりもありません。」とのこと。
???ですねぇ。
私はこの本をご紹介頂いた執筆者の一人でもあります、
たなかなつみさんのサイトにお邪魔して、既に『超短編』に触れていましたし、たなかさんから事前に、小話やショート・ショートとは違うと聞かされていたのですが、それでも読みはじめは戸惑いました。
基本的には500文字くらいでしょうか、中には100文字ないものもあり、“ものがたり”というより、呟きかしら? と思うものもあります。どのお話も幻想的で、現実の世界には無いもので、よくこんな摩訶不思議なモノを想像できるものだと感心しました。 本当に
すごく想像力を要求されますよ。
私は絵を描くので、読んだ言葉のイメージを頭の中で具体的な映像にするのは得意な方です。それでも、この『超短編の世界』は手強い。
例えば、虚の世界に到達した
這い回る蝶々や、三翼をプロペラのように回転させて飛ぶ
ヘリコトンビがうようよ蠢いている世界があるかと思うと、舌の融合した
シャム双生児が睦み合い、
“死態(したい)”となって身体を休める王様親子が避暑を楽しむ世界があったり…。
どうですか? 想像できましたか?
正直、私はこの
摩訶不思議な世界に入っていけなかったのですが、それは上手くイメージを作れていないせいかなぁと思ったんです。
想像力と言うのは、その人の経験値によって豊かさが違ってくると思います。何しろ見たことも聞いたこともない物を文章から描き出す訳ですから、どうしても自分の知識の底を浚って、似たものを探そうとしてしまいがちです。
A.E.ポオが描いた死の匂い漂う深美(たんび)の世界や、
手塚治虫先生の『火の鳥』に出てくる動けない動物と空飛ぶ植物のいる異世界、
レイ・ブラッドベリの青い三角形の赤ちゃんがいる四次元の世界を手本に、イメージを膨らませて読む訳ですが、鮮明な像が思い浮かんだ次の瞬間に、
「…で、だから?」と思ってしまうのです。
頭の固い私は、小話やショート・ショートとは違うと知っていても、どこかでやっぱり、オチやら教訓めいた
意味合いを探し求めて、見つけられなくて途方に暮れてしまうのです。
う〜ん、これを理解するにはどうしたらいいか? 何度も読み返してみます(何たって短いですから)。
起承転結の構成がなくて、お伽話のようでもあり、詩のようでもある。この感じ、何か、喉まで出ているんだけど〜。
「!」ひらめきました。
『マザーグース』です!
意味不明で、空恐ろしい事がぽろっと書かれている。人外のものと人とが同じ世界でおてて繋いで戯れていたりして、何とも不気味で楽しい世界。
勿論『超短編』=『マザーグース』ではありません。単に私が『超短編』というものを感じる(理解したとは言い切れないが)切っ掛けになったというだけですが、目から鱗が落ちました。
どちらも内容そのものが重要なのではなくて、一個の
ものがたり(詩)を組み立てている世界観を楽しむことが大切なんだと思います。短いが故に如何様にも解釈ができて、自分なりの想像を加える事もできますし、言葉の響きや言葉尻を楽しんだり、
自由に読めば良い訳です。
そうやってもう一度『超短編の世界』を読み返すと、手の平を返したように俄然面白いじゃありませんか。読む度に違う感想が出てくるんですよ(自分でも不思議なんですが)。まあ、難しい事はさておき、私が感じた『超短編の世界』は——、
書き手が【恐怖】に対して心に浮かんだ像を綴り上げたら、こんなのが出来ましたと、目の前に差し出されたのは
【恐怖】をぎゅうっと閉じ込めたスノーボール。
掌に乗るほどちっちゃな世界です。中に入っている【恐怖】は簡単に出来ているようで、よく見ると
とても細工が細かい。虫眼鏡があった方がいいかも知れません。
手に取った人は上から下から、
好きなように眺めればいいのです。ふっちゃったっていいんです。中で舞っているのは雪ではないかもしれませんが。
あんまり不思議なんで、ぶち壊して中身の細工を取り出して見てみようと思うのですが、壊した途端に中の【恐怖】は
消えてなくなっちゃう。
こんな感じです。
わっかるかな〜、わっかんねぇだろうな〜(古! 駄目じゃんこれじゃ…)になりそうなので、ちょっと触れてみたいなぁ、という方は
たなかのおと http://www.max.hi-ho.ne.jp/tanakan/
超短編マッチ箱 http://www.microstory.org/community/
超短編500文字の心臓 http://www.asahi-net.or.jp/~nv5y-mngs/magazine/
↑まず、ご覧になってみてください。
摩訶不思議な世界への入り口です。
本もお勧めです。解説も超短い(笑)ですがついていますし、解り易いです。